最近の研究の紹介木造住宅の崩壊解析による耐震診断−新しい精密・動的な耐震診断と補強方法−

木造の建売/注文住宅の崩壊解析による耐震診断法を開発。住まいの新しく精密で動的な耐震診断法であり、設計図から建物の欠陥を発見。シミュレーションで3次元(d3)アニメ動画表示。建設業者/メーカーによる耐震リフォーム/耐震補強/地震対策の費用を安く抑え、地震に強い一戸建て木造の新築/中古/建売/注文住宅の建設/家づくり/リフォーム/耐震改修を達成。

論文著者名:タイトル
(雑誌名)

地震, Vol. 57, pp. 29-43, 2004
粒子軌跡のモデル化によるレイリー波の伝播方向の一推定方法 (12)
楊仲元,川上英二,H. R. Haddadi,孫耀南

4.2 従来の方法との比較

 提案した解析方法との比較のために従来のNIOM法による結果,つまり(20)(21)式での場合をFigs. 8,9に示す.Figs89Figs45とを比べると,特に地点FFCPABに対する既往のNIOM法では明確な山谷が認められず,伝播方向が推定できていないのに対し,提案方法では結果が改善されていることが判る.この理由は,従来の方法の場合(Figs. 8, 9)には図中最上段の上下動モデルの周期が5秒程度(卓越周期よりも非常に短い)であり,観測波形内に信号が少ししか含まれていない周期を中心としたモデル化を行っているのに対し,提案手法の場合(Figs. 4,5)には10-20秒(卓越周期付近)であり,信号が多い周期付近におけるモデル化を行っているからである.さらに,この理由に加えて,短周期の波は局所的な影響を受けているという理由もある.今回の改良で実現した対象振動数の選択により,局所的な影響を受けやすい短周期の波を除くことが可能になり,より明瞭なピークを水平動モデルに生じさせることに成功した.

また,Fig. 10には地点BOSAPABにおける観測波形および上下・水平動モデルのフーリエスペクトルをそれぞれ実線,破線,点線で示す.太線は上下動,細線は水平動(波動伝播方向であると推定された北から60度の方向の成分)に対する結果を表している.本図から=0の場合よりも=0.5の場合の方が観測波形と上下・水平動モデルのスペクトルが類似していることが判る.また,本論文では=0および=0.5の場合の結果を示しているが,最適なの値は解析ケースによって異なるものと考えられる.

Fig.11には従来の方法と比較するため,(a)上下動の自己相関関数および上下動と水平動(10-180°)の相互相関関数,および(b)上下動をパルスとした場合の水平動(10-180°)のインパルス応答,を地点ASCNFFCの記録に対して計算した結果を示している.地点ASCNの場合の上下動の自己相関関数(図中の最上線)には時刻零近傍で高振動数が卓越しており,算定された粒子軌跡に与える観測波形のスペクトルの影響が著しい.これは,観測波形と自己相関関数とは同じスペクトルであることによる.また,地点FFCの場合の上下動と水平動(10°の方向)の相互相関関数(図中の最下線)では時刻零で位相が90度異なる点は提案手法による結果(Fig. 4)と同様であるが,継続時間が長い結果が求められている.一方,提案手法(Figs. 4, 5)では,スペクトルの比(伝達関数)は保持されているが,スペクトルの形状はの場合には全く無視されて,一般のの場合には幾分無視されて,ひとえに単純な波形の組合せが求められている.

一方,Fig. 11(b) に示すインパルス応答では上下動として短周期のパルスが想定されるため,水平動も短周期成分が混じった振幅が小さな結果が得られており,Figs. 4, 5に示された提案方法による結果と比べ明快ではないことが判る.

また,本論文では,地震動の鉛直成分と水平成分の位相が90度ずれていることを示し,半無限弾性体上のレイリー波と整合的であることを示している.しかし,鉛直成分と水平成分の位相が90度ずれるという現象は,例えばSV波とSH波やラブ波によってでも起こりうる可能性も否定できない.また,レイリー波の複数モードが同時に存在する場合,鉛直成分と水平成分の見かけの位相差は複雑になる.本論文では複雑な組み合わせを考えたすべての可能性を完全に検討し,否定するまでの検討を行っている訳ではない.本論文では観測地震動を用いてNIOM法により得られた結果が,最も単純な半無限弾性体でのレイリー波による結果と整合的であることを示しているのである.

また,本論文で解析対象にした波形は,Table 1に示す開始時刻からFigs.2,3に示すように2000-4000秒の区間のIRISにより公表されているデータである.波動の伝播方向は時間的に変動している可能性も考えられるが,本論文ではこのような詳細な検討は行っておらず今後の課題にしたい.

(続き)