最近の研究の紹介:木造住宅の崩壊解析による耐震診断−新しい精密・動的な耐震診断と補強方法− |
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木造の建売/注文住宅の崩壊解析による耐震診断法を開発。住まいの新しく精密で動的な耐震診断法であり、設計図から建物の欠陥を発見。シミュレーションで3次元(d3)アニメ動画表示。建設業者/メーカーによる耐震リフォーム/耐震補強/地震対策の費用を安く抑え、地震に強い一戸建て木造の新築/中古/建売/注文住宅の建設/家づくり/リフォーム/耐震改修を達成。 |
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論文著者名:タイトル
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地震, Vol. 57, pp. 29-43, 2004
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§4.観測地震波の解析
4.1 NIOM法による粒子軌跡と伝播方向の解析 本節ではNIOM法を用いて粒子軌跡と波動伝播方向を検討するために,各同一観測地点(地表面)で得られた地震動の上下及び水平成分の相関をモデル化した.先ず,北南と東西成分の観測波形を用いて,北から時計回りに10, 20, … 180度の方向の水平成分の波形を計算した.そして,得られた18個すべての水平成分の波形と,上下成分の波形を用いて,NIOM法により粒子軌跡をモデル化した.ただし,本論文では,伝達関数を,(1)式に示すように線形理論に基づき時間に依存しない関数として求めているので,得られたモデルも時間に依存しない(時間に関する平均的な)モデルである. 以上の解析を8つの観測地点の記録に適用した.Fig.4にはASCN, BOSA, FFC, PABの4観測地点の記録に適用した結果を4つの図にそれぞれ示し,また,Fig.5にはCTAO, DUG, NEW, YSSの4観測地点の記録に適用した結果を4つの図にそれぞれ示してある.各図はNIOM法により,上下成分と,北から10度から180度の方向の水平成分を用いて解析した結果を示している.最も上の曲線は上下動モデル Figs.4,5より,卓越周期は10−20秒であること,また,振幅の大きな水平動モデルには時刻零 地震波の伝播方向を検討するため,粒子運動が卓越する鉛直面をまず求めた.水平動モデルの各曲線に対し山谷の差を求めFigs.6,7に示す.Figs.6,7の破線で示すように,最大値は観測地点ASCN, BOSA, FFC, PAB,CTAO, DUG, NEW, YSSそれぞれに対し北から時計回りに約70, 60, 10, 60, 100, 160, 160, 90度の方向で生じている.例えば観測地点ASCNでは北から時計回りに70度の方向の鉛直面が粒子運動が卓越する面であると考えられる.Figs.4,5には,こうして推定された方向に対するNIOM法による水平動モデル,例えば観測地点ASCNでは70度の結果,を太線で示している. また,Fig.4の太線では山が約+4〜5秒で,谷が約-4〜5秒で生じており,最大の山谷差を生ずる水平動モデルは上下動モデルより約90度位相が遅れている.一方,Fig.5の太線では山が約-4〜5秒で,谷が約+4〜5秒で生じており,最大の山谷差を生ずる水平動モデルは上下動モデルより約90度位相が進んでいる. ここで,「90度の位相のずれ」は,Figs. 4,5で時刻(横軸)が零付近の様子から判断した.つまり,丁度 cos波とsin波が90°ずれているように,時刻が零の時に上下動は最大値(山)を示し(cos波に類似),水平動は零(谷から山,または,山から谷への移行)を示し(sin波に類似)ていることから判断した.例えば,Fig.4 の地点では @ -4〜5秒で水平最小,A 0秒で上下最大,水平零,B +4〜5秒で水平最大,C +8〜10秒で上下最小,水平零 のような楕円軌跡が得られている.例えば,水平方向の正が東方向を示す場合には,粒子の変位が,@ 西,A上,B 東,C下 という粒子軌跡である.因みにFig.5 の場合には 水平の正負が逆になり,例えば @ 東,A上,B西,C下 という粒子軌跡である.これら@からCの全過程(-8〜10秒から+8〜10秒までで,1回転に16秒から20秒かかっており,この値は周期に相当する)で1回転の楕円運動を表している. これらの結果は,水平成分が上下成分と90度位相がずれているという単純な半無限弾性体におけるレイリー波の粒子の楕円の軌跡の理論解と整合的である[Richart et al., 1970].そして,図中太線で示した粒子運動が卓越する面の方向は,レイリー波の場合には粒子運動が伝播方向を含む鉛直面内で生じているため,波動の伝播方向と考えられる. さらに,座標系(北南,東西,上下)の正負の向きを考慮し,単純な半無限弾性体におけるレイリー波の軌跡の回転方向が逆転であることを考慮すると,90度位相が遅れたFigs.4,6の場合の伝播方向は,NIOM法により得られた上述の方向と逆方向であり,即ち,観測地点ASCN, BOSA, FFC, PABでは北から時計回転方向にそれぞれ250, 240, 190, 240度であると推定される.また,90度位相が進んだFigs.5,7の場合には,伝播方向はNIOM法による方向と同一方向であり,則ち,観測地点CTAO, DUG, NEW, YSS では北から時計回転方向にそれぞれ100, 160, 160, 90度であると推定される.ここで,これらの推定の際には,レイリー波の伝播方向を逆向きにすると,「進む」「遅れる」が入れ替わることを考慮している. もとより,本論文では,鉛直成分と水平成分の位相差の正負(波の進行方向に対する粒子軌跡の回転方向)からレイリー波の伝播方向を推定しているが,レイリー波の粒子軌跡の回転方向は,必ずしも逆転の向きではなく,周期,地下構造およびモードによって順転/逆転が変化する.すなわち,波線は推定できたとしても,位相差の符号だけでは伝播の向きまでは決定できない.本論文では,最も単純な半無限弾性体におけるレイリー波の粒子軌跡の回転方向の理論解(逆転)を考えた場合に,解析した波形においては,後述するように,波動伝播の向きが劣弧(短い方の大円経路)と一致することを単に示したに止まっている.
(続き) |