最近の研究の紹介木造住宅の崩壊解析による耐震診断−新しい精密・動的な耐震診断と補強方法−

木造の建売/注文住宅の崩壊解析による耐震診断法を開発。住まいの新しく精密で動的な耐震診断法であり、設計図から建物の欠陥を発見。シミュレーションで3次元(d3)アニメ動画表示。建設業者/メーカーによる耐震リフォーム/耐震補強/地震対策の費用を安く抑え、地震に強い一戸建て木造の新築/中古/建売/注文住宅の建設/家づくり/リフォーム/耐震改修を達成。

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埼玉大学開放デー(2008年5月24日)講演会資料

木造家屋の崩壊解析耐震診断法とその適用例 (3)

埼玉大学地圏科学研究センター 教授  川上 英二

3.本方法の主な改良点

本研究では、新しい耐震診断方法として、特に従来の方法の下記の問題点に改良を加えながら、「崩壊解析 耐震診断法」の計算プログラムを開発した。

@ 従来の耐震診断法は静的解析であり、破壊・崩壊・振動を直接扱っていない

 耐震問題は構造物の破壊・崩壊問題であるのに、従来、許容応力度法をはじめとして、静的解析が中心である。特に木造建物の場合には壁の長さに壁倍率を掛けて足し合わせた数で耐震性を評価している。例え動的な振動を扱っていても崩壊挙動までは扱っていない。計算機の能力が飛躍的に進展した現在、研究ばかりでなく耐震診断という実務においても、動的な非線形崩壊解析を行うことにより、耐震診断の精度が向上するものと考えた。

A 従来の方法は安全性を考えた設計・診断であるため、本当に破壊する外力が判らない

崩壊解析 耐震診断法では、実際の現象をなるべく正確に表すことを目的とし、実際の外力に対する平均的な応答を求めており、これが本方法の特徴である。強度としては下限値ではなく平均値を使用し、起こる可能性がある非常に大きな外力までをも考慮し、これに対する平均的な(最も起こりそうな)応答を算定している。

B 本方法では余裕がばらつくことを利用

従来の設計基準の思想は、基準や規則の性質上、最低限の条件を課すことを目的としている。すなわち、解析中の仮定はすべて安全側であり、ばらつきを考慮して安全率を大きくとり、部材の強度などは非常に控えめな小さな値としている。しかし、これでは設計が不可能になるので、外力はそこそこの(小さな)値を用い、バランスを取っている。つまり、設計基準では、強度も外力も共に小さく想定し、安全性を検討している。このため、建物が本当にどの程度の外力で壊れるかがよく判らない。阪神大震災で指摘されたように、観測された地震外力は設計外力よりも非常に大きかったが、すべての構造物が破壊した訳ではなく安全な構造物も多かった。この理由は、安全率を考慮したために設計強度と実際の強度との違い(余裕)、および、設計における安全側への仮定(たとえば非構造部材を無視)に伴い余裕が(たまたま)生じていたためである。しかし、設計の際に評価しない余裕に安全性が依存することは、不明確であり、合理的ではない。

現在の設計は、余裕を当てにした(不明確な)安全に基づいている。崩壊解析 耐震診断法では、この安全性の余裕を積極的にできるだけ正確に評価し、利用する方法である。即ち、従来の設計基準では、各部材の強度に余裕が有る様に設計されるのだが、余裕が大きい分には問題が無いと単に扱っている。このために、余裕の程度は部材により異なりばらついている。部材によっては強度に非常に余裕があり、逆に余裕が無い部材が建物の弱点となり、ここから崩壊が生じてしまう。単純に述べると、建物全体の強度は、建物を構成する多くの部材中の、最も弱い部材(グループ)の強度で決定される(いわゆる 直列システム)と考えることができる。

従来の設計では、(そこそこの大きさの)設計外力に対しては、すべて(100%)の部材が壊れないように設計されている。このため、多くの建物のほとんどの部材は、設計外力よりもずっと強く、設計外力の2倍、3倍の強度がある。しかし、1倍の強度の部材があると その部材で破壊が始まり、連鎖的に崩壊する。もし、1倍の強度の部材だけを2倍の強度にまで補強すると、建物は2倍の外力まで耐えることができる。建物内の弱点となる少数の部材のみを補強することによって、残りの部材の強度が十分に(最大限度まで)発揮できるような補強を、崩壊解析 耐震診断法では目指している。

C 本方法では判定結果を数値の羅列から動画(アニメーション)に変更

従来の耐震診断の判定結果では、基準を「満足しているか否か」または、幾つかの数値で耐震性の程度が与えられる。しかし、どの様に崩壊するか等の具体性は無い。これは従来の解析が静的解析のために仕方がないことである。

一方、崩壊解析 耐震診断法では、建物を構成する柱・梁・壁などの各部材の強さを実験結果に基づいて正確にモデル化し、これらを組み上げ、建物全体のモデルを作成する。これに大地震で観測された地震動を与えることにより、建物がどのように応答・崩壊するかを力学的に精密に計算し、建物の崩壊過程を具体的に動画で示す。得られた動画に基づき、最初に破壊した箇所をまず補強し、再度崩壊解析を行う。そして、この補強と崩壊解析との手順を建物が設定した外力に耐えるようになるまで繰り返す。

木造在来軸組建物に対しては、崩壊解析 耐震診断法をすでに開発済であり、研究論文の発表と並行して、埼玉大学のホームページhttp://www.saitama-u.ac.jp/kawakami/で研究成果を公開している。本ホームページでは、阪神大震災の地震動などを、幾つかの建物に対して与えた場合の応答を動画で示している。建物がどのように安全であるか、または崩壊するかを見ることができる。

本ホームページは、NHK「ゆうどきネットワーク」20061110日)、テレビ朝日「Jチャンネル:Jのこだわり」(2006127日および316日)、毎日新聞社「サンデー毎日」(2006129日)、「日刊 建設産業新聞」(200637日)などの一般向けの番組・記事でも紹介された。また、本ホームページは、YAHOOの登録サイトにも採用(カテゴリ名:地震学>地震対策)されたため、訪問者数も多い。

動画で最初に壊れた部材(場所)が建物の弱点であり、どの部分が弱いかが視覚的にわかることから、家全体を耐震補強するのではなく、弱い部分だけを補強すれば良いことになる。このため、不必要な補強や過剰設計を避けることが可能であり、費用が安くすむ。改修後の応答も動画で確認できるため、家を新築・改築する際の設計のチェックや設計変更に役立つ。

(続き)