最近の研究の紹介木造住宅の崩壊解析による耐震診断−新しい精密・動的な耐震診断と補強方法−

木造の建売/注文住宅の崩壊解析による耐震診断法を開発。住まいの新しく精密で動的な耐震診断法であり、設計図から建物の欠陥を発見。シミュレーションで3次元(d3)アニメ動画表示。建設業者/メーカーによる耐震リフォーム/耐震補強/地震対策の費用を安く抑え、地震に強い一戸建て木造の新築/中古/建売/注文住宅の建設/家づくり/リフォーム/耐震改修を達成。

論文著者名:タイトル
(雑誌名)

土木学会論文集,No.780/I-70, pp.41-56, 2005

アレー観測データに基づく地表面近傍での地震波動の伝播方向の推定(2)
楊仲元,川上英二

1.はじめに

 地震動は地殻を構成する岩盤中で生じた断層運動により発生し,地表へ伝播することより構造物やライフラインに被害を与える.1995年兵庫県南部地震では,都市の直下の震源から伝播してきた強烈な地震動に起因して甚大な被害が生じ,このことは未だに記憶に新しい.これらのことから,地盤中での地震動の伝播特性および増幅特性などを解明することは重要なことであると考えられる.

観測される地震動は,地震の発生機構,震源から観測地点に至る伝播経路,観測地点付近の局所的な地形や地盤条件などに依存する.地震波は,地下の震源から全ての方向に放射され,それぞれの方向に放射された実体波が3次元的に屈折しながら地表に伝播する.そして,地表に近づくに従い,地震動の伝播方向は次第に鉛直上方向に向く傾向がある1).井合・浦上・森2)は地表面上のみでのアレー記録を用いて実体波の伝播速度と方向を推定した.

従来の研究により,地震主要動の実体波の地表近傍での伝播方向は鉛直方向であることは第一近似としては異論の無いところであるが,近年のアレー観測における観測時刻の正確さの向上,および,観測地点数の増大は著しいため,実測地震記録を用いて,伝播方向の推定の精度をもう一段階上げることが可能かもしれないと考えた.そして,このことを検討することを本研究の目的とした.

つまり,震源位置が観測地点に対して例えば北にある,東にある,または深いということが観測点での波動伝播方向にも支配的な影響を与えているのか,または,観測点付近や伝播経路に沿っての不均一性の方が支配的な影響を与え,伝播方向は震源の位置に依らずむしろ同一方向であるのか,または,その他の色々な影響によるばらつきが大きいため統一的な結論が得られないのかなどの疑問を明らかにすることが本研究の目的である.

 本研究の目的をより具体的に示すと,

(1)    アレー観測記録から求められた地震動の水平面内における伝播方向を,震央から観測地点への地図上の方向と比較し知見を得ること

(2)    鉛直面内における地震動の伝播方向が鉛直方向とどの程度異なるかをアレー観測記録から求め,地盤構造から推定される方向と比較し知見を得ること

(3)    地震波動の上下成分の伝播方向は,水平成分の伝播方向とどのように異なるかを明らかにすること

などである.

本研究では,地震波動の伝播方向の定量化にもう一段階の精度の向上をもたらすために以下の方法を試みた.まず,地表および地中の高密度アレー観測を用いて地表面近傍での地震動の3次元的伝播方向を推定する手法を展開した.そして,本方法を東京大学生産技術研究所の片山・山崎研究室による高密度千葉アレーの水平2方向と上下方向の3成分の観測データ3),4)に適用した.ここで,多重反射が生じている地中での観測点における地震動の伝播方向を推定するためには,まず観測地震動から入射波および反射波を精度よく分離し,複数の各地点におけるこれらの到達時刻を推定する理論手法が必要となる.

これまでにKawakamiHaddadi5),6)は,多重線形システムに対する基準入力−出力最小化(NIOM)法を提案し,複数地点で観測された地震波形の相互の関係を保ったまま単純化することにより,各地点,各深度における入射波,反射波を分離し,これらの到達時刻の関係などを明らかにしている.NIOM法は,波動伝播システムを多変数線形システムでモデル化し,複雑な観測波形相互の関係を表す伝達関数を満足するような単純な波形群を作成し,入射波および反射波を精度よく分離し,複数の各地点におけるこれらの到達時刻を推定するための方法であり波動伝播状況(伝播方向・速度など)を推定するために利用可能な方法である.本方法は波動の到達時刻を相互相関関数による方法よりも明瞭に求め得る方法であり,本研究においてはこのNIOM法を使用している.

 最後に,地表面近傍での地震波の伝播方向と観測地点から見た震源の地図上での方向との関係を検討した.また,気象庁(市川・望月7)による近地地震の走時曲線と弾性水平多層理論に基づき地震波の地表層への入射角を推定し,この理論解と本解析でアレー観測結果から得られた値とを比較した

(続き)