最近の研究の紹介木造住宅の崩壊解析による耐震診断−新しい精密・動的な耐震診断と補強方法−

木造の建売/注文住宅の崩壊解析による耐震診断法を開発。住まいの新しく精密で動的な耐震診断法であり、設計図から建物の欠陥を発見。シミュレーションで3次元(d3)アニメ動画表示。建設業者/メーカーによる耐震リフォーム/耐震補強/地震対策の費用を安く抑え、地震に強い一戸建て木造の新築/中古/建売/注文住宅の建設/家づくり/リフォーム/耐震改修を達成。

論文著者名:タイトル
(雑誌名)

地震, Vol. 57, pp. 29-43, 2004
粒子軌跡のモデル化によるレイリー波の伝播方向の一推定方法 (2)
楊仲元,川上英二,H. R. Haddadi,孫耀南

§1.序文

従来,地震動に含まれる波動の種類を推定し,波動の伝播特性を検討する方法として,位相または群速度を用いる方法がある[Tanimoto and Anderson(1985), Barker et al.(1996), Chael (1997)].本方法は,位相の情報を主に使用する方法であり,観測された地震動から位相速度,群速度を求め,表面波などの分散曲線の理論値と比較する方法である.また,地震動の多地点での観測であるアレー観測結果から,F−K(振動数―波数)スペクトル法により波動の空間的な伝播の状況やこの地盤条件との対応を検討する方法は有効な方法である Capon (1969)].

一方,粒子軌跡に基づき波動の種類や伝播特性を検討する方法も有効な方法であると考えられる.しかし,地震観測波形は,一般に色々なモードの表面波やP波・S波の実体波が混ざった複雑な波形を示すため,含まれる波動の種類や性質を調べるためには,観測波形を単純化することが必要である.従来よく用いられてきた相互相関関数やインパルス応答に基づく方法は観測波形を単純化する方法である [Yamanaka and Katayama(1998)]

しかし,相互相関関数では,特に卓越周期が長い場合には波動の分解能が悪く,振動数領域のフィルターの上下限を適切に設定する工夫が行われているが,ある振動数成分以下をカットするか否かという単純な方法では分解能を十分に向上できない.また,インパルス応答では雑音が全く含まれない場合には良好な解が得られるが,雑音が含まれる場合には,入力の振幅が非常に小さいが出力が有限であるような振動数が存在することがあり,この振動数での伝達関数が非常に大きくなり,この振動数が卓越したインパルス応答が求められる.このように,相互相関関数やインパルス応答に基づく方法では,良好な解が得られない場合がある[Kawakami and Haddadi (1998), Haddadi and Kawakami (1998)].

近年著者らが提案しているつの方法Simplified Input Output Relation Method (SIORM)Kawakami and Bidon (1997)Normalized Input-Output Minimization (NIOM) Method Kawakami and Haddadi (1998), Haddadi and Kawakami (1998)複数の信号間を線形の伝達関数で結びこれらの相関を検討する方法であり従来の相互相関関数やインパルス応答に基づく方法に比べ上記問題点を解決した新しいつの信頼性の高い方法である

 本論文では,まず従来のNIOM法を改良し,観測波形をモデル化した波形(NIOM法で算定した最小自乗振幅波形であり,本論文では「モデル波形」または単に「モデル」と呼ぶことにする)と観測波形とのスペクトルが類似するように式を展開した.また,与えられた振動数帯域内のモデル波形を作成する方法を展開し,従来の相互相関関数またはインパルス応答による方法との関係を考察した.

 次に,観測波形としては,遠地地震による観測波形を使用し,各観測地点における上下成分と水平成分に改良NIOM法を適用し,粒子軌跡を単純化した.そして,振幅が最大値を示す方向から波動の伝播方向を推定し,この推定値と,震央と観測地点を含む大円の方向とを比較した.そして,改良されたNIOM法は,粒子軌跡を単純にモデル化し,波動の伝播方向を推定するための新しい一つの簡単な方法となり得ることを示した.

(続き)